きりとりせん

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寓話 / あたたかな島

 

 
わたしは小さな豆粒のような大きさなので
眺められる範囲というのも
限られていて
すぐ先の風景は見えるけれど
霧の向こうになにがあるかは
近づかないと見えない。

だから
いままでずっと
見えていなかったが
しかし
どうもこの旅では
わたしは
3つの島を順に歩くことになっていたらしかった。

なにしろ
はっと気づいたときにはもう
旅は始まっていたから
旅の行程なんて
知る由もなかったのだ。
ただ行く先々にはいろいろなことがある
ということは
漠然とわかっていた。

ある日わたしは
飛行機に乗って
彼に会いに行き
一晩を一緒に過ごしたあと
また飛行機に乗って
帰ってきた。
わたしはもちろん
いままでの地に帰ってきたつもりだった。
わたしはもうずっと2の島に暮らしていた。
遠い記憶の向こうにいたときから。

しかし
ほんとうのところ
わたしは
彼のところへと飛行機に乗ったとき
2の島を後にしていたらしかった。
そして翌日
飛行機の爆音とともに
けたたましく上陸したのは
あるとも知らなかった3の島だったのだ。

たしかにぎょっとするほどけたたましい着陸だった。

しばらくわたしはそのことに気づかなかった。

どうやらちがうと気づいたときは
いままでとはまったく違う
あたたかな砂の上を歩いていた。

ここは
2の島と
まったくおなじ見ためでありながら
まったくちがう場所だった。

茫然としながら
わたしは
あたらしい地の土を踏んで歩く。

もうこれからは
2の島で長いことしてきたような
歩きかたはしないのだろう。